先日、桐朋の大先輩でいらっしゃる小澤征爾先生が亡くなられた、というニュースがありました。
私自身小澤先生に指揮を振って頂いたことはないのですが、夏休みに開催される音楽祭で小澤先生の指揮でオーケストラに参加した友人がこう言っていました。
「ほんとに普段はどこにでもいそうなおじちゃんなんだけど、やっぱり指揮をする全然違うんだよね!」
実は私もオーケストラに参加して指揮を振る先生によってこんなにも変わるんだ!と実感した経験があります。
それは学生の頃、ロリン·マゼール氏による指揮者コンクールのオーケストラとして参加した時のことです。
いくつかの課題曲を、コンクールに参加される若手の指揮者の方たちが私たちのオーケストラを指揮して、それを競うというものでした。
しかし、だんだん練習を重ねていくうちに、オーケストラだけで演奏が固まっていってしまい、指揮者の方に、私を見てください、と言われてハッとしました。
そうだ、オーケストラは指揮者の方の意思をくんで演奏しなくてはならないんだ!と。
それからは指揮者の方それぞれのカラーにあわせた演奏をするよう、心を入れ替えて演奏したことを覚えています。
その頃 ちょうどアメリカでテロが起こりました。
そう、9.11テロ事件です。
そこでマゼール先生がチャリティーコンサートを開かれることになり、私たちも参加することに。
元々コンクールではマゼール先生に振っていただく予定はなかったのですが、私たちは巨匠とよばれる先生に指揮していただく機会をもらえたのです!
お忙しい先生なので、ゲネプロと本番の2回で、
確か曲は、ベートーヴェンのエグモント序曲だったと思います。
先生が指揮棒を上げた瞬間、私にもわかりました。
「全然違う…」
何が違うというと上手くいえないのですが、空気が変わるのです。
オーケストラに参加している全員の集中力が本当にひとつになった瞬間でした。
今でもあの鳥肌がたつような、ピリっとした空気を忘れることはありません。
まもなく新年度です。
みなさんもぜひ楽器を始めて、忘れられない感動の一瞬を味わってみませんか。